はりねずみ通信

2017.12.01

モチベーションの保ち方

昨日は大阪にある二次診療施設の院内カンファレンスに、講師として参加した。
私が行っている低侵襲治療の紹介、というのがテーマの一つ。もう一つは、「獣医師としてみずからの心と体の健康を保ち、長く働くためのアイディアを伝える」という目的もあった。はりねずみ体操や腹腔鏡折り鶴の話もした。

終わったあと、いくつか質問があった。
「継続して努力していくことの重要性はわかったが、どうやってモチベーションを維持していくのか」
「挫折しない工夫として、みずからに賞罰をあたえるというのはどうか?(つまり、腹腔鏡折り鶴などを長く続けるには、100羽折ったら自分にご褒美を与える、とか逆にできなかったら腕立て100回のような罰をあたえる、とか)」

それに関して自分なりに答えてみたが、うまく答えられなかった気がしたので、ここで補足してみる。

モチベーションの維持について。
私が腹腔鏡や胸腔鏡外科に取り組んでいる理由は、先行している人医療の内視鏡外科に強い憧れがあるからである。
「これを動物医療で行うことができれば、どんないすばらしいか」
と考えるためだ。
何かについて努力するとき、理想や憧れは重要である。
それを実際に自分ができるようになったときのことをイメージできるとよい。
もうひとつ大事なことは、「賢くなりすぎない」ということである。賢い人は、うまくいかないのではないかと計算し、「自分には才能がない」「これをやることに意義が見いだせない」とさまざまな理由付けをする。
どこかちょっと馬鹿っぽいところを残しておき、愚直に取り組むことが大切だと(私は)思う。

みずからの取り組みに賞罰を与えるべきか否か。
私はあまり勧めない。
一人で何かに取り組んで、あるところまで行けば自分に褒美を与えるとする。なんとなくいいような気がするが、たぶん自己完結的な取り組みはいつか破綻する。褒美に慣れてしまい、より強い褒美がほしくなる。

一番いいのは、「誰かと一緒に取り組む」ということである。
世の中は広いので、自分が関心のあることは誰かも取り組んでいる。
別にその人といつも一緒にやる必要はない。学会で出会ったときに、時々意見を交換する、という程度でもよい。
「だれかもがんばってやっている」
と知るだけで、モチベーションはグンと上がる。
自分もそういう人たちのコミュニティーに属していると思うことが、継続できる秘訣だと思う。

人間は自分の私利私欲だけでは満たされない生き物である。
だれかとの関係の中にしか、幸せは見いだせない(それを証拠に、無人島で億万長者になったってしかたがない、と思うはず)。それを利用するのがよい。

ちなみに私が腹腔鏡折り鶴を続けられる理由は、ほかにもがんばっているひとがいるからである。

IMG_7369
みかん

 

4件のコメント

  • 昨日は、ありがとうございました。
    レックスの耳ですが、毎日、金剛水で拭いて薬いれたほうがいいのか、
    聞くの忘れてました。1週間後の予約はいれてます。

  • おはようございます。
    昨日からまたアキが入院でお世話になっております。父犬が急に弱り始めたため
    かない先生に診て頂こうと思っていた昨朝、虹の橋を渡ってしまっていました。これまで多い時で6頭の愛犬たちと暮らしてきましたが、どのコも最期は ほんの少し目を離したあいだに旅立っており、飼い主に最期を見せないという話は本当なのだなと思いました。母犬が3年前に旅立った時も、この度の父犬の時も、アキはいつもと違う気配を感じ取ってか、犬舎のそばに一度だけ寄り添って寝ていました。お別れの挨拶だったのでしょうか…
    今日、父犬を家族で見送るのですが、
    アキは母犬を亡くした時に しばらく食欲が落ち元気もなかったため、昨日もう一度 父犬を見せてお別れのことを伝えました。じっと私の目をみて聞いてくれているようでした。とても繊細なコなので、後追いのように衰弱してしまうのでは?と少し心配もありますが、退院後には寂しい思いをさせないように これまで以上に家族でアキと過ごす時間を大切にしたいと思います。まだ父犬が旅立ってしまったことも、あまりにも急なお別れだったので実感がなく、これから たくさんの思い出がよみがえる度に、悲しさや寂しさも増すのでしょうが、できるだけ楽しかったことを思い出すようにして、出会えたことへの感謝の気持ちで過ごしたいと思っています。アキのメンタル面も気になりますが、入院中 どうぞよろしくお願い致します。

    • アキママさん、悲しい思いをされていると思います。でも、ご家族が大切にされてきたからこそのことだと思うのです。どうか気を落とさないように元気に過ごしていただきたいです。
      アキちゃんは元気にしていますよ。

  • 先生のおっしゃる通り、「理想や憧れ」ってとても大切だと思います。
    憧れの対象者ではなく「自分の理想や憧れ」に負けたくないって気持ちが私のモチベーションを保ってくれる時が多いです。
    「ご褒美」…
    好みの問題ですのでなんとも言えませんが、私が自分にご褒美を与えだすと…破産します(笑)
    「誰がと一緒に取り組む」
    その場面場面によって違いますが、動物医療に関して、先生やスタッフの方々が豊富な知識や経験・技術で、飼い主と一緒に取り組んでくださったら、これほど心強く幸せなことはないと思います。
    はりねずみ体操、中毒になりました(笑)
    やらないと一日が始まらない気がしてきました。
    同時に、折り鶴も毎日一羽折ってます。
    私には必要のないことかもしれませんが、ノームの長寿祈願です。
    体操と祈願、それができることへの感謝、清々しく一日が始められます(*^^*)

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