はりねずみ通信

ほっといてくれて・・

外山滋比古著「思考の整理学」(ちくま書房)に興味深い話が書いてあった。

大学では自らテーマを探し学んでいく、という態度が必須なのに「テーマを与えてほしい」という人がとても多い。それはグライダーのようなもので、大空を飛んでいるようだが人の力を借りて行っているだけである。自力で飛べる飛行機になりたまえ。

まったくそうである。
こんなことも書いてある。

徒弟制度は古い教育法といわれる。職人のところに弟子入りしても、最初は雑用ばかり。手取り足取り教えてもらえない。でも、そうやっているうち、弟子たちは「あんなふうになりたい」という欲望が募ってくる。陰(かげ)から覗いて技を盗もうとする。それが後の飛躍につながる・・。

教えすぎるのはよくない。それではグライダーにはなれても、飛行機にはなれないのである。

思い出したのは、私の勤務医の頃。
師匠のK先生は、私がそばで見ることを極度に嫌った。
「向こうでほかのことをやってこい」
という。雄猫の尿道にカテーテルを入れる方法は、ついに一度も教わらず(見せてもらえなかった)、3年後自分で会得した。そのコツがわかったとき、
「ああ、これで自分もひとりでやっていける」
と思ったのだった。今思えば、レベルの低い話である。尿道カテーテルが入れられても、自立できるはずはない。でも、この感覚が鮮明に残っているのは、無力だった自分が何かを得た瞬間だったからであろう。

私はPLDD(経皮的レーザー椎間板除圧術)を国内でもっとも多く行っている。
よく訊かれるのが、
「どこで習ったのですか?」
ということである。レーザーのメーカーが行う講習には参加したが、動物への方法論はすべて自分で考えた。動物に有効であるかもよくわかっていなかったが、大型のレントゲン装置が入る手術室を建築するところからはじめたのだった。
私にとってはごく自然な流れ(こうしたい、と惚れた手技にのめり込んでいくこと)だったが、他の人には無謀な冒険に思えるようだ。

そういったことを考えると、K先生が手取り足取り教えなかったことが、私の財産になっている。よくぞ、ほっといて下さった。
いまは感謝の気持ちでいっぱいである。

 

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くうちゅう

 

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