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胸腔鏡下にて心膜切除・胸管の分離とクリッピングを行った乳び胸の1例

CT胸管造影および胸腔鏡下胸管結紮術・心膜切除を行い低侵襲で治療できた特発性乳び胸の犬の1例

○金井浩雄1)、上條圭司2)、角谷悠介1)、藤居彩子1)、後藤充1)

1)かない動物病院(兵庫県)、2)ゼファー動物病院(東京都)

はじめに:乳び胸の外科手術のうち、胸管結紮術と心膜切除術、乳び槽の破壊の組み合わせは、現在もっとも有効な治療法と言われている。しかしながら、これらの方法は開腹と開胸を必要とする侵襲性の高い術式である。今回、我々は、CTを利用した開腹手術を必要としない胸管造影法で正確に胸管の位置を同定し、胸腔鏡を用いて胸管結紮術を行ったところ、拡大された視野のもと、胸管の確実な同定・結紮を行うことができた。そして、これに胸腔鏡下心膜切除術を組み合わせることにより、非常に低侵襲に特発性乳び胸を治癒に導くことができたため、報告する。
材料と方法:犬、柴犬、未避妊メス、4歳、体重6.4kg。他院にて特発性乳び胸と診断され、紹介にて来院した。胸管の走行を把握するため、第11病日に以下の通りCT胸管造影(*)を行った。
*CT胸管造影法:イオパミドール(商品名:オイパロミン370)を0.6ml/kgで直腸粘膜下あるいは肛門周囲の皮下組織に注射後、軽く5分間マッサージを行い、その後CT撮影を行った。画像は3D構築し、胸腔内における胸管の位置を確認した。
本症例では、胸管は胸腔の左側に一本走行していた。乳び胸の原因となる胸管の破綻箇所は確認できなかった。
第19病日に手術を行った。まず、仰臥位にし、剣状突起尾側から経横隔膜アプローチにてトロッカーを挿入してカメラポートとした。その後、左右の肋骨間から1本ずつトロッカーを刺入して器具ポートとし、超音波凝固切開装置で心膜を切除した。次に側臥位に体位変換を行った。術前のリンパ管CT造影検査により、左側の胸郭内に胸管の走行が確認できたため、胸管結紮は右側臥位から左側アプローチにて行った。肥厚した心膜を剥離鉗子で丁寧に剥離することで、胸管を同定できたため、分離した後クリッピングした。
結果:手術当日から旺盛な食欲があり、一般状態は極めて良好であった。術後8日目に胸管の閉鎖を確認するため、再びCT造影検査を行った。最初のCT造影で検出された胸管は確実に閉鎖できていたが、反対側の右胸郭に胸管の側副路がわずかに開通していることが判明した。しかし、乳びは術後10日で消失したため胸腔ドレーンを抜去した。術後1年経過するが、再発なく良好に経過している。
考察:特発性乳び胸の手術方法は、まだ多くの課題を残している。しかしながら、今回我々が行ったCT造影と胸腔鏡下胸管結紮・心膜切除法を用いた手法は、過去に報告された方法に比べ侵襲性が低いだけでなく、局所を可視化して確実な処置を行うことができる非常に有効な方法である。胸腔鏡下でこれらの処置を行うには、周囲組織の剥離や切開、結紮など高度な技術を必要とするため、術式のさらなる検討は必要であるが、今後標準的な治療になり得ると考えられた。また、術前と術後のCTリンパ管造影を行うことにより、乳び胸の病態生理の解明に寄与すると思われた。今後は症例数を積み重ね、より侵襲性の低い、確実な手法へ発展させたい。

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かない動物病院
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